2014.05.04
From:大森睦弘
六甲国際ゴルフ倶楽部より、、、
こんにちは、ETGA(江連忠ゴルフアカデミー)の大森睦弘です。
今回は、
「体・片山晋呉プロ飛びの秘密」
について話してみたいと思います。
2014年JGTOツアー、つるやオープンゴルフトーナメント最終日、
江連忠ゴルフアカデミー契約の片山晋呉プロが、
とうとうドライビングディスタンス1位(324ヤード)を叩きだしました。
晋呉さんも驚きの様子でしたが、
晋呉さん担当チームの一員としての私も、
「え、ホントに?」
江連も「まさか。。。」という驚きの一言で、
感動の渦に巻き込まれたのです。
こんな興奮の中、書き出したら手が止まらず、
ゴルフライブの事務局からは、
「そんなに書いてしまっていいんですか?」
「また『長い』って言われますよ!(笑)」
そんなある意味「お叱りの」コメントをもらいました。
が、まあ、書いてしまったのでよろしくお願いしますということで、
そのまま消さずに投稿させていただききます。
でも、それほど感動が大きかったのです。
飛ばしを追求しなくても、飛ぶ
ということで、今回はいろいろなお話を一気に詰め込んでいます。
飛びのために、いったいどんなことをやってるの?
という全体像をつかむにはいいのかと思い、
リストアップのつもりで、盛り込んでしまいました。
ここから先は、かなり長いので(笑)、
どうぞ心して読んで下さい。
とその前に、つるやオープンでの晋呉さんのすばらしかった点は、
パー5での2オン率は、4日間を通じてトータルで1位。
単に飛ぶだけではなく、狙った遠くに正確にボールを運べる能力の高さを、
この数字が示してくれています。
(狙いすぎて、ラフにやバンカーに捕まるという事もありましたが)
晋呉さんの現在(2014年4月時点)の年齢は、41歳です。
身長も171cmと、けっして大きくはありません。
そして、江連忠ゴルフアカデミーでは、
・5年連続ゴルフダイジェストドラコン日本選手権
レディース部門優勝の斎藤かおり(最高記録331ヤード)
をはじめとして
・2013年度のLPGAドライビングコンテスト優勝のO.サタヤプロ
・同、2位の山村彩恵プロ(ワンツーフィニッシュです)
などなど、飛ばしを追求しているだけではなくても、飛んでしまう。
かなり効果的な練習をやっていることが証明されたという感じです。
「ドライバー・イズ・ショー。パット・イズ・マネー」
とも言われるように、飛ばしはショー的な感じがありますね。
スコアは悪くても、飛んでくれればなんとなくうれしい、
というようなところでしょうか。
とはいえ、いくら飛んでもOBとかではノーカウントです。
飛ばせば飛ばすほど、より方向性が重要となり、
スイング精度もアップしなければ、意味がないのですね。
片山晋呉プロの飛びに効果のあった練習とは?
さて、江連忠ゴルフアカデミーでの
どんな練習がこんな飛びを実現しているのでしょうか?
その飛びに関係しそうな点を、リストアップしてみました。
(1)下半身を目一杯使って、上半身をバネの様に使う体の使い方
(2)硬式野球ボールのティーバッティング
(3)重りを体の前後に振る体力強化トレーニング
(4)徹底した素振り
(5)重い物叩き
(6)体幹と関節を安定させるトレーニング
(7)ストレッチング
(8)無駄の徹底排除
これらの項目が、飛びにかなり直接的な効果があると言えます。
なんだかたくさんありそうに見えますが、
それぞれの項目は、重いバーベルを挙げる事に比べると、
比較的軽い運動になります。
一番負荷の大きな物でも、重りを体の前後に振る運動ですが、
その重りの重さは16kg~18kgです。
重量挙げなどと比べたら、そんな運動で効果があるの?
というような、なんだか軽い負荷ですね。
しかし効果の秘密は、ここにあげた8つの事の組み合わせにあるのです。
一つだけとりあげて行うよりも、
すべてをまんべんなく行うことで相乗効果が現れます。
そういった意味で、この8項目をすべてリストアップさせていただきました。
それが重要だからなのです。
また当然、練習方法という観点の他に、
体の使い方としての、クラブのリリースの方法とかにも
飛びにつながる重要な点があります。
しかし、さすがに紙面の都合もあり、
今回は、練習方法だけのリストアップとさせて頂いています。
下半身を目一杯使い、上半身をバネの様に使う
「伸張短縮サイクル」という、引き伸ばされた筋肉が、
勝手に縮もうとして通常のパワーより
かなり大きなエネルギーを吐き出す仕組みが有ります。
その筋肉の仕組みに加えて、ゴムのように引き伸ばされた腱
(筋肉と骨の接合部)がパワーを蓄積して、
一気にエネルギーを吐き出すのです。
それは、自分から筋肉を収縮させようとする動きでは、
出せないパワーを発揮してくれるのです。
自分からといいますか、自分の意志で
筋肉を収縮させない感じがものすごく重要です。
この「伸張短縮サイクル」を全身で実現するためのイメージとは?
腰から上は板で自らは何もしない。
その板の上に肩甲骨が乗っかっていて、その肩甲骨が前後にスライドする動きに
「伸張短縮サイクル」を働かせる感じでしょうか。
下半身の動きを使って、体幹としての板にパワーを伝え、
その板のような体幹が、肩甲骨をスライドさせる。
「下半身は目一杯、上半身は脱力」
これが江連忠ゴルフアカデミーの合言葉です。
ただし、脱力は勘違いされやすく、
わたしは「脱・力み」ということにしています。
このような動きができるように、アプローチショットぐらいの振り幅
(30ヤードキャリー以下)ぐらいから、
徹底して下半身を使い切る動きを身につけます。
晋呉さんもこの30ヤード以下でのショットの中で、
その他のショットでの基本的動きを定着させています。
定着といったのは、単にできるというのではなく、
意識しなくても体が勝手に動いてくれるまで練習し、
されにそれを忘れさせないために、繰り返し繰り返し練習を積む。
ということですね。
硬式野球ボールのティーバッティング
これは、江連忠ゴルフアカデミーの超定番のトレーニングです。
人にトスしてもらってもいいし、野球のティーを膝の高さぐらいにして、
そこに硬式野球ボールを乗せてもいいです。
なぜ、硬式野球ボールかと言いますと、
それは重くて硬いからなのです。
重いと言うことは、ボールヒットした時に、当たり負けしない体の使い方や、
バットのリリースのやり方を自然に覚えることが出来ます。
硬いということで、芯に当たらないと、
ビリビリとバットが振動して気持ち悪いですね。
ですから、自然に芯に当てようと努力することになります。
また基本的に、ステップ・インしながらボールを打ちます。
その事で、自分がボールを打つ最適なところにスット入る、
本能的に入る、最適ポジションを探すということが、自然にできます。
このように、野球の硬式ボールのティーバッティングは
ものすごくいろいろなご利益があるのです。
重りを体の前後に振る体力強化トレーニング
重りを両手に持って、両股関節を曲げ伸ばしして、
その重りを体の前後に振ります。
後ろに振るということは、広げた両脚の間に、
重りを通して後ろに振る事になります。
前に振るということは、胸の正面のところまで、
重りを振り上げる事になります。
この前に振る時、両腿をくっつけるように内転筋群をしっかり働かせることと、
体幹を板、腕を紐のように使うことが重要となります。
腕の力、背筋や肩の筋肉を、自分から収縮させて振っては全く効果がありません。
収縮させられる、パワーを出させられるという感じが大切になります。
実は、このトレーニングにはある逸話があります。
ジャンボ尾崎さんが晋呉さんに、
「お前、なんでそんなに飛ぶようになったんだ」と聞いた時の事です。
最初、晋呉さんは「道具のマッチングが良くなったからです」と答えたそうなんです。
ところが、ジャンボさんが「正直に本当のことを話してみろ」というので、
仕方なく本当の事、この重りの前後振りの話をしたそうです。
ジャンボさんもホームページにこのことを書いているようですね。
また、パワーを出すためには「腱」のしなやかさがかなり重要です。
意外と細くて筋肉が少なそうなのに、実際にはぶっ飛んでいる人もいます。
その仕組みは、しなやかな「腱」によるものです。
よく伸びる「腱」を正しく伸ばして使うことことで、
バーベルをただ挙げるだけの最大筋力では語れないようなパワーを発揮出来るのです。
ところで、すごいジャンプ力のある動物といえば「カンガルー」ですね。
そのカンガルーの脚の「腱」は細くて長いのです。
ということは、よく伸びるしなやかな「腱」の構造をしているということです。
「腱」をストレッチしてしなやかにすることは難しいと言われています。
しかし、この重りを前後に振る動きで、肩甲骨周辺の腱が引き伸ばされて、
しなやかになるのです。
ただし、やり方を間違えなければの話ですが。
先ほど話題にさせていただいた「伸張短縮サイクル」を
上半身に発生させるように振ることがポイントとなるのです。
そして、この運動は股関節を曲げ伸ばしすることで、
パワーを出すようにします。
この時に主に働く筋肉は大殿筋です。
(かっこいいお尻を作る筋肉で、お尻の後ろ上側の筋肉)
で、その大殿筋をしっかり働かせてくれるために、両脚の内転筋群
(両脚と閉じるとき働く筋群で、ももの内側の筋群)を使います。
重りの前後振りは、この大殿筋と内転筋群を積極的に鍛えることにもなります。
徹底した素振り
江連忠ゴルフアカデミーでは、特にジュニアとプロの集合練習では、
ほぼ必ず徹底した素振りをやっています。
SW、 重い棒、軽い棒、アイアンなどですね。
右振り、左振り、左手・右手片手素振り、スロースイングなど。
そして、それぞれの素振りの間に、簡単なトレーニングを入れます。
スクワットとか、V字ジャンプとか。
トレーニングには転移効果という現象があります。
それは、トレーニングを行っていない筋肉にも、
トレーニングを行ったと同じような効果が現れるというものです。
直接スイングすること以外のトレーニングでは、
必ずしもスイングに効果的に関連する筋肉を鍛えているとは言えません。
しかし、トレーニングしてすぐにスイングすることで、
他の筋肉でのトレーニング効果が、スイングするための筋肉にも伝染するというものです。
ですから、素振りの間に、必ずトレーニングを入れます。
あ、逆の言い方の方がわかりやすいのかもしれませんね。
トレーニングだけをするのではなく、トレーニングの間に
素振りを入れるということです。
さらに別の言い方をすると、せっかくトレーニングしても、
なかなか実際のスコアには結びつかないとも言われています。
3年ぐらい一生懸命トレーニングしたら、
ちょっと飛距離が伸びたかもというような例も有ります。
重いウエイトを一所懸命つらい思いをしながら上げたのに、
あまり飛距離が伸びなかったなんて、悲しいですよね。
でも、それは現実的にありえる話なのです。
ウエイトトレーニングだけやって、そのすぐ前後ぐらいにスイングをしないでいると、
スイングに直接関係する筋肉への波及効果が少なく、
逆にスイングするための筋肉のバランスを崩しているだけとなる事もあるのです。
あなたも、トレーニングとスイングは、
絶対ごちゃまぜにしてやってくださいね。これは、必ずです。
重い物叩き
野球の硬式ボールを金属バットで打ちぬく事でもいいのですが、
ドラコン5年連続チャンプの斎藤かおりは、
トラックの大きくて重いタイヤを、金属バットで打ちぬく事が以前から好きでした。
実は晋呉さんも、タイヤなどの重い物をクラブで打ったりしています。
実際、トーナメント会場でも、メディスンボール
(ゴムの塊の2kgぐらいのボール)に練習用クラブヘッドを打ち当てています。
江連忠ゴルフアカデミーでは、ボクシング用のサンドバックを
金属バットで叩いています。
これが一番気持ちよく、うっぷん晴らしにもなります。
本当に気持ちいいですから、是非試してみていただきたいですね。
環境がなくてなかなかできないのが残念ですが。
体幹と関節を安定させるトレーニング
先ほどの、下半身を目一杯使うという項目でも説明させていただいた事ですが、
「腰から上は板で自らは何もしない」という感じがものすごく大切になります。
「ドローイン」といいますが、お腹を凹めるようにして、
腰から上の胴体(体幹)をしっかり安定させるようにします。
また、体幹に下半身のパワーを伝える部分は、
股関節になりますので、この股関節周りの筋群をしっかり鍛えます。
どう鍛えるかと言いますと、股関節の動きを一つづつ丁寧に行うのです。
伸展、屈曲、外転、内転、外旋、内旋。
それぞれの動きを一つづつしっかり動かすような運動を行うことで、
股関節が思ったように動いてくれて、パワーを体幹に伝達することが出来るのです。
体幹も股関節周りも激しく動かすというよりも、
30秒程度同じ体勢をキープするような運動で関節を安定化できます。
パワーを直接出すというよりも、パワーを出す筋肉群をしっかり支え、
関節を正しい位置に安定させるようにします。
一般的にはインナーマッスルと言われる、関節を安定させる筋群を
しっかり機能できるように動かしておくという運動も行います。
意外と地味で、こんな運動で、パワーを出すための役にたつのかとも思われがちですが、
故障しないで、今ある筋肉のパワーを使い切るためには、非常に大切なのです。
この関節を安定させるための筋群を鍛えることで、
パワーを出すためのトレーニングである、重りの前後振りの効果が現れてくるのです。
ストレッチング
柔軟性は飛びにはあまり関係ないと思われがちです。
無理やり付けた筋肉で飛ばすのではなく、人間本来の能力を使って飛ばすためには、
柔軟性はなくてはならないものなのです。
先ほど説明させていただいた、カンガルーのしなやかな腱の話、
そして「伸張短縮サイクル」の話。
このどちらにも関係し、さらには動こうとする動きを邪魔しない、
大きく動けるという意味でも、柔軟性、可動域の大きさというものは
飛びに直結する大切なものなのです。
晋呉さんは、開脚前屈(床の上で両脚を広げて、体を前に倒す)では、
軽々胸というかお腹までが床に着いてしまいます。
それほど股関節まわりの可動域があり、柔軟性があるのです。
柔軟性があるほと、筋肉などにあるセンサーの働きが敏感になります。
そのため、筋肉を引き伸ばすときに発生する、
筋肉を勝手に収縮しようとする反応がしなやかな筋肉ほどよく現れます。
筋肉が硬いと、この反応がにぶく、その恩恵を得にくくなるのです。
スポーツ科学の文献「スポーツコンディショニング (ビル・フォーラン著)」
の中でも、筋力トレーニングはしないで、柔軟体操だけすることでも、
パフォーマンスアップを行うことができることが報告されています。
無駄の徹底排除
当たり前のようですが、体が出せるパワーをあますところなく
ボールに伝えるために、体の動きの無駄を徹底的に減らしてゆきます。
その方法とは、重い物を振ったり、長い物を振ったり、連続ステップ打ち、
平均台乗ショットなどを行うことで、自分で無駄な動きに気づくようにすることです。
体のパワーの無駄使いが減ると、クラブヘッドのボールに対する
ミート率がよくなってきます。
それは、最も飛ぶ所にヒットしやすくなるとか、
当たり負けしない体の使い方になるからです。
とまあ、あまりに盛りだくさんすぎて、
それぞれの詳しい内容まではたいしてお伝えできませんでした。
とはいえ、飛びの全容を理解していただけるためには、
何らかのお役にたてたのではないかと思います。
あ、そう言えばもう一つ、体力テストと飛距離の相関関係が
あまりない感じがしてならないのです。
ドロップジャンプ(台から飛び降りてジャンプ)の飛ぶ高さをアップさせたい時、
ウエイトトレーニングを行ってもあまり変わらないけど、
実際にドロップジャンプの練習をおこなうと向上しやすいということがあります。
ゴルフでの飛距離も同じようなことがあり、実際のショットに、
できるだけ近い体の使い方ができるトレーニングが大切なような気がしています。
今日も長くなりました。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
では、また。
追伸:ETGA所属の梶川プロの動画、公開中です。
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