2013.09.15
From:大森睦弘
六甲国際ゴルフ倶楽部より、、、
こんにちは、ETGA(江連忠ゴルフアカデミー)の大森睦弘です。
気づけば、このゴルフライブでの連載も10回を超えていました。
(今日で11回目になるそうです)
お読みいただき、いつもありがとうございます。
さて、今週も先週と先々週に引き続き、
「ハービー・ペニックとの対話」をお届けしたいと思います。
前回は多くの方から感想やご意見ををいただきました。
(今週もあなたのご意見、お待ちしています!)
今回は、ゴルフのスイングでしばしば問題として取り上げられる
「ルックアップ」について、ハービーさんと話してみたいと思います。
今回でハービーさんとの対話も3回目になるわけですが、
まだハービーさんのことをご存知でない人のために、簡単な自己紹介から。。。
(すでにご存知の方は読み飛ばして下さい)
ハービー・ペニック(1904-1995)は、1923年にプロゴルファーの職を得てから
亡くなるまで、トッププロからアマチュアゴルファーまでを教えた、世界的な名コーチです。
このハービーさんは、トッププロもアマチュアも分けへだてなく
「1時間5ドル」という、あってないような報酬でレッスンをし続けました。
晩年は耳が遠くて電話では直接話せないため、
奥さんを介して電話レッスンまで行ったそうです。
そして有名な話が、ハービーさんが60年以上にもわたって、
教えるときに感じたり気づいたことが書いてきたノートがありました。
そのノートは門外不出とされ、同じくゴルフコーチをしていた息子以外には
愛弟子たちにも決して見せなかったそうです。
しかし、ハービーさんが87歳のとき、その門外不出のノートを出版しようと思い立ち、
そして出版されたのが、リトル・レッド・ブック(Little Red Book)という本です。
今では全世界で100万部以上読まれている「伝説のレッスン書」となっています。
この伝説の名コーチが残した「Little Red Book」という貴重なメモをもとに、
「もし今の時代にハービーさんがいらしたら、何とおっしゃるだろう?」
という私の想像をもとに、
私、大森との「対談形式」でお届けしようと考えています。
それでは、今日もどうぞお楽しみください。。。
言われていることは本当に正しいのか?
(大)ハービーさん、私はよく「やっていい事と悪い事」ということで、
生徒さんからよく質問を受けることがあるんです。
(ハ)ほう。その手の話は、確かにゴルフにはいろいろあるのう。
しばしば言われていることと、実際が大きく違うことが。。。
実はわしも、おぬしと同じように悩んだ事がいくつかあるぞ。
(大)え、ハービーさんも同じことで悩んでいらしたんですか?
(ハ)いろいろな事に遭遇して、最初に頭で考えていたこととは
まったく別物になってしまうことはよくあることじゃ。
おぬしだって、ゴルフの世界にどっぷり浸かる前は、
研究開発という仕事をしていたらしいが、
その時にも同じようなことを感じたんじゃなかろうかのう。
(大)はい。研究開発現場では、いいアイディアというものは、
考えているだけではなかなか出ないものですね。
ああじゃないか、こうじゃないかといろいろ思いを巡らせることは、
単なる始まりでしかなくて、そこからが長い道のりでした。
(ハ)ほう。
(大)実際の物を使って実験したり、コンピューターでシミュレーションしたり、
自分が考えたことが本当にそうなのか確かめることはよくしましたね。
(ハ)うむ。頭で考えただけだと、発見がないじゃろ。
(大)そうなんです。いままで遭遇しなかった状況に積極的に自分の身を置くことで、
アイディアのヒントが見つかるんですね。
(ハ)ゴルフで言えば、おぬしが今やっている「実験」というのは、
トッププロのスイングをじっくり観察して、
なぜいい成績が出るんじゃろうかとか分析したりしておるんじゃろう?
そして、実際にそのショットを試してみて、
あるいは変えてみて、どうなるかを見る事などじゃろうな。
実際、そんな作業を積み重ねる中で、いろいろな発見があるもんじゃ。
本当にルックアップはいけないのか?
(大)で、やっていい事なのか悪い事なのかで、
ハービーさんが悩まれた事って、一体何なんですか?
(ハ)「ルックアップ」じゃ。
(大)え、「ルックアップ」って、ボールヒット前に
顔をターゲット方向などに向けてボールを見ずに打つ、あれですか?
(ハ)そうじゃよ。
他にもいろいろあるにはあるが、一番驚いたのがこれじゃな。
(大)え、驚いたというのは?
(ハ)わしも最初の頃は、ボールはよく見て打った方が、
きちんと当てやすいと思っておったんじゃ。
(大)それはそう思いますよね。
(ハ)ところがのう。。。わしの見る限り、ボールをヒットする時に、
本当にボールを見ているというトッププレーヤーは、
たっった3、4人だけだったんじゃ。
(大)えっ? それはわたしも驚きです。。。
ボールヒットでしっかりと顔がボールの方を見ていて、
ボールを見ているように映像として写っている人がほとんどだと思いますが。
(ハ)そこが問題なんじゃ。
形は見ていても、実際に見えているかというと、そうではないようなんじゃ。
(大)どういうことですか?
(ハ)特に驚いたのは、ベン・ホーガンじゃ。
やつは「ダウンスイングでボールを見失う」と言っておるんじゃ。
ボールヒットじゃなく、ダウンスイングですでに見えないというか、
見ようとしていないというか、気にしていないというのか。。。
とにかく「見失う」と言っとるんじゃ。
(大)それはクラブヘッドスピードが速すぎて、
見えないということもあるのかもしれませんが。。。動態視力との関係?
(ハ)うーむ。。。どうかのう。
(大)でも、外からはある程度ボールに近づくクラブヘッドの動きは予測できますよね?
前回のお話で出た高速度撮影カメラですが、高速度カメラで撮影しなくても、
クラブシャフトの動きとかを見ていれば、その先のクラブヘッドの軌道はある程度わかりますね。
(ハ)ショットする本人は、トップからのクラブシャフトはほとんど見えないから、
クラブヘッドを追うしかなんじゃろうな。そうなると「見えない」とも言える。
じゃから、どうせ見えないんなら、見ようとしても意味がないということもある。
有効な「目つぶりショットドリル」
(大)私は、生徒さんにボールポジションが正しいかどうか確認していただく場合に、
目をつぶってショットしてもらうことがあります。
(ハ)うむ。それは、わしもやることがある。
(大)目つぶりショットドリルは、ある程度ショットが安定して、
ショットは結構大丈夫そうだと感じた方にだけ行っている方法なんです。
(ハ)ほほう。
(大)ボールヒットに向かって目が反応して、悪いボールポジションに対して
体を合わせてしまって、ショットが悪くなっている場合があるんです。
ということは、目でボールを見て、クラブヘッドを合わせることができるということですよね?
なんだか、見える見えないで矛盾するようにも感じます。
ひょっとして、医学的、物理的問題というよりも、何かそこにあるのかもしれませんが。
(ハ)そうなんじゃ。ボールポジションも含めて、セットアップが正しくできれば、
ボールなんか見ていなくても、決めた所にクラブヘッドは降りてくる。
だったら、セットアップでしっかりボールとの関係を確かな物にしておけば、
スイングが始まったらボールなんか見なくてもいいということなんじゃ。
(大)そうですよね。目つぶりショットドリルでは、
普通に打っているのとまったく変わらないように打てる人がいるんですから。
(ハ)そこなんじゃよ。
(大)今は引退した、世界女王のアニカ・ソレンスタムの特徴は「ルックアップ」ですが、
彼女はスイングもセットアップも完璧だったから
「ルックアップ」してもまったく問題なかったというか、
むしろ体の動きとしてはスムーズに動けるために大切だったんでしょうね。
(ハ)トッププロになるようなやつらは、ターゲットをイメージすれば、
そこに打ててしまうんじゃな。それだけ、ショットの完成度が高いんじゃな。
(大)そうなんですよね。ショットの完成度は一般の人とはまったく別次元ですからね。
ある意味、ジム・フューリクのように、腰から上の動きはかなり修正したほうが
いいようなものなのに、結果としては腰から下の動きをよくして、
非常に安定したショットをしてますよね。
悪い動きでも、固まってしまって、自分の物にできれば、
それはそれでいいというような典型的な例ですね。
(ハ)しかしじゃ、逆に、手で変に合わせにいかないための練習として、
目つぶりショットドリルが使えることもあるんじゃぞ。
(大)うーん、私の経験ではかなり難しいと感じていますが。。。
(ハ)手打ちの人のセットアップをちゃんと作ってあげて、
素振りをしてくださいと言いながら目をつぶってもらうんじゃ。
そして、何回か素振りしてもらって、もう安定したかなという時に、
テークバックが始まったタイミングで、最高にいいボールポジションに
ボールを置いてあげるんじゃ。
そうすると、意外とみんなうまくボールに当ててくれるんじゃよ。
(大)そうか、それで、ボールに合わせに行く動きがなくなって、
気持よく振り抜ける動きの中でボールをヒットする体験ができるんですね。
しかも、目をつぶっているのに。
(ハ)そうじゃ。前回話題に上がったクラブヘッドの向きも、手で合わせに行くというよりも、
イメージでボールにスクエアに当てようとすることで、
全身がうまく動いてくれて、クラブヘッドが合ってくれるんじゃ。
(大)そうなんですよね。イメージすることで、右脳が働いてくれて、
全身がうまく調和してくれるんですよね。
だから、手先ではなく、クラブヘッドをスクエアに当てようとするイメージが大切なんですよね。
(ハ)手で合わせにゆく事と、イメージすることはかなり違ってくるんじゃな。
説明が足りないと勘違いされやすいので、注意しなければならんな。
(大)ソレンスタムもできるだけターゲットを見て、イメージで全身をそれに合わせたかったから、
あんなスイングになっていたのかもしれませんね。
ターゲットを捉える大切さは、また別の機会に話をさせてください。
(ハ)そうじゃな。ターゲットを捉えることはかなり重要じゃから、
またの機会にじっくり話してみるとしよう。
(大)今回は「ルックアップ」に端を発して、
結局やってはいけない動きではないという事に落ち着いた感がありますね。
ついつい話が盛り上がりすぎて、脱線もあり、時間を忘れてしまいました。
今日はありがとうございました。
(ハ)うむ。では、またじゃ。
—
いかがだったでしょうか?
今回のハービーさんのこの連載は、
私の中でもちょっとした「チャレンジ」となっています。
ですのでぜひ、このメールを読んでのあなたの感想、
ご意見などを聞かせて下さい。
さあ、これからハービーさんとの対話が軌道に乗るのか。。。(笑)
どうぞお楽しみに。
では、また。